・最判令和2年9月8日
・本件各違約金債権は,いずれも,破産会社の支払の停止の前に上告人と破産会社との間で締結された本件各未完成契約に基づくものである。本件各未完成契約に共通して定められている本件条項は,破産会社の責めに帰すべき事由により工期内に工事が完成しないこと及び上告人が解除の意思表示をしたことのみをもって上告人が一定の額の違約金債権を取得するというものであって,上告人と破産会社は,破産会社が支払の停止に陥った際には本件条項に基づく違約金債権を自働債権とし,破産会社が有する報酬債権等を受働債権として一括して清算することを予定していたものということができる。上告人は,本件各未完成契約の締結時点において,自働債権と受働債権とが同一の請負契約に基づいて発生したものであるか否かにかかわらず,本件各違約金債権をもってする相殺の担保的機能に対して合理的な期待を有していたといえ,この相殺を許すことは,上記破産手続の趣旨に反するものとはいえない。
・掲載誌:民集74巻6号1463頁、裁判所時報1751号4頁、判例タイムズ1481号25頁、金融商事判例1612号8頁、同1613号20頁、法学教室484号127頁、同486号144頁(高田賢治)、判例時報2476号18頁、令和2年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊 2021年4月10日号(1557号))106頁(藤本利一)、金融法務事情2160号74頁、同2162号4頁(石井教文)、同2166号6頁(吉澤敏行)、同2168号70頁(折田健市郎)、ジュリスト1559号105頁(調査官:野中伸子)、銀行法務21-873号26頁(東畠敏明)
投稿者:弁護士 菅野邑斗