【論稿】倒産手続において外国債権者がいる場合の留意点

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(文責:福岡真之介)

 近時企業のグローバル化が進み、倒産手続において、債権者の中に外国債権者がいることも珍しくはありません。本稿では、倒産手続のうち破産手続と民事再生手続について、外国債権者がいる場合の留意点について解説します。

1 資産の保全

 債務者が外国に保有する資産については、日本の裁判所の保全命令等の効力は、当然には外国には及びません。そのため、そのような外国所在資産について、外国において強制執行等がなされる可能性があります。そこで、再生債務者が外国に有する資産を保全するには、外国における外国倒産手続の承認手続などを利用して、日本の倒産手続の効力を外国に及ぼす必要があります。

 日本の破産法や民事再生法は、手続の効力が国外資産にも及ぶとする普及主義を採用しています(破産法34条1項、民事再生法38条1項)。しかし、普及主義を採用しているからといって、必ずしも日本の再生手続の効力が外国で当然に認められるわけではありません。外国で正式に日本の再生手続の効力が認められるためには、当該外国で承認手続などを利用する必要があります。例えば、米国では連邦倒産法第15章に基づく手続がこれに該当しますので、外国所在資産が重要資産である場合には、債権者からの差押えをされないようにするため、このような承認手続を取ることも検討する必要があります。

2 手続開始の連絡

 倒産手続の申立ての通知や債権者説明会の開催の連絡や、開始決定通知や債権届出書も外国債権者に送付する必要があります。これらの各種書類には、通常、英文の翻訳あるいは英文で送付することが一般的です。

 債務者が債権者説明会を開催する場合、債権者説明会において通訳を入れるかは再生債務者の判断にゆだねられています。通常、債権者説明会は申立て直後に開催されるため、外国債権者は日本の代理人を選任することが多く、通訳の必要性は高くないように思われます。あるいは、債権者が通訳を同行するのが通常です。

 裁判所の開催する債権者集会では通訳が入ることは基本的にありません。

3 債権届出書の取扱い

 債権届出書において、外国債権者の有する外貨建て債権については、外貨建てで届けてもらい、債務者の方で円に換算することが多いでしょう。

 再生手続の場合、議決権行使の関係で、円の換算の基準時は再生手続開始決定時の為替レートとされます(再生法87条1項2号二)。これは、あくまで議決権行使の基準としての円貨換算であり、再生計画の再生債権の金額の計算において、この金額を利用することは可能ですが、必然ではありません。

 なお、外国債権の発生・効力の準拠法は、契約に基づいて発生した債権であれば、契約の準拠法によります(法の適用に関する通則法7条)。

4 外国訴訟・仲裁の取扱い

 外国で訴訟・仲裁が継続している場合に、再生手続の開始により中断するかについては、当該外国の法律・裁判所の判断となり、当然に中断するものではありません。中断しない場合には、日本の債権確定手続との関係が問題となり、調整が必要となります。外国に資産がある場合には、日本の債権確定手続が優先すると主張しても、実効性がなく、最終的には外国の法律・裁判所の判断に従わざるを得ず、実務的には、日本での債権確定手続について、査定決定をせずに係属したままにしておくなどして、外国の訴訟・仲裁の決着を待つことになるものと思われます。また、訴訟と仲裁では、取扱いがことなることもありえるので注意が必要です。

5 再生計画作成上の留意点

 再生手続の場合、再生計画を作成することになりますが、外国債権者の有する外貨建て債権については、まず、再生計画上の弁済額の計算の基礎を外貨ベースでするのか、円に換算した金額とするのかが問題となります。再生計画を作成にするにあたり、いずれを採用するのかについて法律上の制約はなく、いずれの方法も可能です。もっとも、議決権行使金額を算定する段階において円に換算されていることや、配当率を計算するに当たって再生債権を全て同一通貨で計算するのが簡単であることから、外貨建て債権も円ベースの再生債権額として把握して再生計画を作成することが多いでしょう。

 次に、外貨建て債権をどのように弁済するかが問題となります。外国債権者の有する外貨建て債権に対する弁済については、送金の関係から外貨によらざるを得ず、機軸通貨である米ドルにより弁済することが一般的でしょう。外貨で弁済する場合、弁済額が円ベースの場合には、外貨に交換する必要があります。為替差損の発生を防ぐため、実際の弁済時の為替レート(TTS)を適用し、そのことを再生計画に記載することになるのが一般的と思われます。

 通常であれば、以上の方法で大きな問題は生じませんが、保有資産の外貨建て資産が占める割合が大きい場合には、この方法では問題が生じる可能性があります。すなわち、円ベースの計算に基づいて配当原資を計算した場合、保有する外貨建て資産の外貨の為替レートが悪化した場合には、配当原資となる資産が目減りしてしまい、配当原資が確保できない恐れがあります。そのような事態を回避するためには、再生計画の提出時に配当原資となる資産については予め円に換金しておくか、または外貨建てをベースとして配当率の計算をし、保有している外貨資産から外貨建てで弁済することにより為替リスクが発生しないようにすることを考える必要があります。

以 上

 

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