事業再生の解説

法的整理と私的整理

 経済的に苦境に陥った企業について、債務を整理(リスケ・カット)して再建する方法としては、裁判所を利用しないで債務を整理する「私的整理」と呼ばれる方法と、裁判所を利用して債務を整理する「法的整理」と呼ばれる方法があります。

 私的整理の中には、主に、①任意交渉、②私的整理ガイドライン、③事業再生ADR、④中小企業再生支援協議会スキーム、⑤整理回収機構(RCC)企業再生スキーム、⑥地域経済活性化支援機構(REVIC)スキーム、⑦特定調停があります。

 法的整理の中としては、①民事再生、②会社更生、③破産、④特別清算、の4種類の手続があります。

 私的整理の特徴としては、あくまでも債権者・債務者の合意に基づく制度であり、必要な範囲内で低コストかつ柔軟に対応をとることが可能という点があげられます。しかし、合意をしない当事者を手続に巻き込むことはできません。

 法的整理の特徴としては、法律に基づく制度であるため、全ての債権者を強制的に手続に巻き込むことができるという非常に強い効力があり、また裁判所が関与するため平等性・公正性も担保されるという点が挙げられます。しかし、厳格な法定の手続の履践が求められ、コストがかかり、柔軟な対応が難しいという短所があります。

 事案によりけりですが、一般的には、その傷が浅いうちは低コストかつ柔軟な手続を取ることができる私的整理によって処理され、その傷が深く関係者間の対立が深刻なときは厳格かつ強制力のある法的整理によって処理されるという傾向にあります。

再生型手続と清算型手続

 企業を債務整理するにあたっては、当該企業の再生・再建を目的とするのか、企業の清算・解体を目的とするのか、によって取るべき方法も変わってきます。

 再生・再建することを目的とした方法を再生型手続といい、清算・解体することを目的とした方法を清算型手続といいます。

 私的整理は、基本的には再生型手続にあたりますが、自主廃業は清算型手続きです。法的整理のうち、①民事再生、②会社更生は再生型手続にあたり、①破産、②特別清算は清算型手続にあたります。

 清算型手続は、対象となる企業を清算・解体するものですから、当該企業の保有財産が全て債務の弁済に回されることになりますし、経営者にけじめをつけさせることにもなりますので、シンプルな手続といえます。しかし、継続事業価値が全て失われてしまうので、取引債権者の場合には取引先を失ってしまうことになるため、一般的に債権者が得られる経済的な満足は低くなってしまいます。

 これに対し、再生型手続は、対象となる企業の再生・再建をするもので、当該企業の有する継続事業価値を生かすことができますし、従業員の雇用の確保もできます。また、債権者は清算型手続よりも多くの弁済を受けることが可能となります。

 一般的には、今後も継続事業価値を生かすことができると見込まれる場合は再生型手続によって処理され、そのような見込みがない場合には清算型手続によって処理される傾向にあります。

 但し、近年では、清算型手続において事実上の事業の再生を図ったり、再生型手続において事業の清算・解体を図ったりする事例もあり、両者の区別はあいまいになってきています。

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