弁護士法72条は、次のように定めています。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
したがって、債権者である金融機関との間での債務調整についての交渉は、具体的な事案によりますが、法律事務を取り扱っているものとして、弁護士法72条に違反する場合があります。
弁護士法72条に違反する行為は非弁行為と呼ばれており、摘発事例もあります。
弁護士法72条の解釈については平成22年7月20日の最高裁決定があります。これは、弁護士資格がない者がビルのテナントの立ち退き交渉を行った事例についてのものですが、その立ち退き交渉について、最高裁は、「立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生じることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法72条にいう『その他一般の法律事件』に関するものであったというべきである」と述べ、立ち退き交渉をした者は弁護士法72条に違反するものとして有罪判決(懲役2年、執行猶予4年)を維持しています。
この件は、立ち退き交渉の件ですので、対金融機関とのリスケや債権放棄の交渉とは異なりますが、リスケや債権放棄についての交渉が、貸付金の有無・弁済時期・弁済額などをめぐって交渉によって解決しなければならない法的紛議が生じることがほぼ不可避であるとして、弁護士法72条違反が問われる可能性は否定できません。
金融機関との交渉を弁護士法72条に違反しないように行う方法としては、本人である会社の経営者が直接交渉するやり方と、弁護士に依頼してしまうやり方があります。