はじめに
倒産の実務は、まさに法律問題のるつぼであり、また取引実務・慣行のるつぼでもあります。M&Aや金融にも大きくかかわり、その対応には広い知見と深い洞察力が要請されます。
倒産法研究会は、このような倒産実務について、初心者から実務経験者まで幅広く研鑽できる場として活動しております。基本的な活動は、弁護士会にて毎月第三木曜日午後6時から開催される例会において、経験豊かな講師(東京地裁民事8部・20部部総括判事、倒産法研究者、倒産実務家等)による講演を実施し、その後の懇親会にてまた様々な意見交換を行っております。会員数は二弁以外の会員も含め357名(2019年3月7日時点)となっており、活発な研究会です。
入会希望の方は、入会前であっても例会に来て頂くことは大歓迎ですので、例会において幹事に対し入会についてご相談下さい。入会申込書をお渡し致します。登録1年未満の方は年会費無料です(登録2年目の方は年会費5000円、それ以外の方は1万円です)。
初心者の方向けの活動
初心者用プログラムとしては、毎年2月の例会において、破産手続申立ての実務を取り上げております。今年も具体的な経験を交えながら、法人と個人の破産申立ての実務について会員が講師となり、東京地裁民事20部の裁判官からもご意見を適宜頂きながら解説を行いました。個人の自己破産申立てであったとしても、いろいろなノウハウがあり、そのポイントを解説しております。懇親会では、同部裁判官も参加されますので、裁判所からみた実務的な話しも気軽に聞くことができる機会となっています。
その他の例会においても、法的倒産手続や私的倒産手続について、第一線での実務を比較的わかりやすく説明してもらえますので、最初は耳慣れない話が多いかもしれませんが、すぐに耳学問にて講師の体験が身につき、実践で大いに役たつことと思います。倒産実務は、まずは個人破産申立てや法人破産申立てから始まると思いますが、さらに3年の弁護士実務経験を経た後は、東京地裁の破産管財人名簿への登録が可能となりますので、破産管財事件に携わることも可能となります。破産管財人になってからの対応などについては、研究会における研鑽が非常に役に立つと思います(そのほか、破産管財人になろうとする弁護士向けの研修としては、倒産法研究会会員が講師となって、破産管財研修を毎年4回実施しております)。
さらに研鑽を深める活動
倒産実務をさらに深く研鑽したいと希望する会員向けに、二ヶ月に一回程度のペースにて、倒産実務の研究会を開催しております。倒産法の研究者をお招きし、法的問題・実務的問題について毎回テーマを決めて検討しております。今年は「倒産債権の優先・劣後」について検討を行っております。倒産専門弁護士を目指す方は是非とも参加してみて下さい。
また、これまで「倒産法改正への30講」(2013年、民事法研究会)、「倒産と担保・保証」(2014年、商事法務)を発刊し、昨年も「破産手続書式集(新版)」(慈学社)を発刊しております。このように、研鑽した内容を対外的に公表する活動も行っております。
そのほか、毎年、東京弁護士会、第一東京弁護士会、大阪弁護士会の各倒産法部と共催にてシンポジウムを実施しているほか(このシンポジウムの内容はNBLに掲載されています)、東京地方裁判所民事20部における東京三弁護士会の倒産法部との協議会(年2回開催)への参加を行うなど、裁判所や他の弁護士会との交流も活発に行っております。
さらなる活動について
さらに、年一回、主に温泉地にて合宿を行っております。昨年は軽井沢で実施し、初日の午後前半は、法政大学法学部杉本和士教授から「開始時現存額主義」について、基本から最近の最判までを講演して頂きました。基本的かつ難しい概念をわかりやすく解説して頂きました。後半は40期代の中堅弁護士による倒産実務における失敗談の公表会があり、参加者全員の貴重な教訓としました。その後は懇親会、二次会となります。翌日はゴルフコンペがあり、ゴルファーはそちらでさらに研鑽を積み、その他の方はゆっくり観光となります。
倒産実務は法律のるつぼであり、取引実務・慣行のるつぼですので、専門書も多数出ておりますが、専門書に書かれていない実務経験も非常に重要となります。その実務経験を月一回の例会・懇親会を中心とした活動において、先輩弁護士から後輩弁護士に継承していくことは当研究会の第一の使命であると思っております。したがって、倒産を専門としていない事務所の方であっても、倒産弁護士となることに興味がありましたら是非ご参加下さい。
2019年3月15日 弁護士 髙井章光